ベトナムの優秀な人材が特定技能1号資格を取得し日本で働く機会は、これからますます増えていくでしょう。ベトナム人の雇用に密接に関係する「登録支援機関」と「特定技能所属機関」について、当記事で詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。

 

「ベトナム人労働者を受け入れるには、どんな手続きが必要なんだろうか……
「特定技能所属機関ってどうやったらなれるの?」

ベトナム人を職場に迎え入れたいと考えつつも、外国人労働者の新しい受入制度に戸惑っていらっしゃる企業は少なくありません。

そういった不慣れな企業に代わり、特定技能1号資格を取得して日本で働く外国人をサポートするのが、「登録支援機関」の役割です。

今回当記事では、複雑でわかりにくい外国人特定技能制度と、外国人労働者の雇用に大きく関係する「登録支援機関」「特定技能所属機関」という2つの機関について詳しく解説していきます。

登録支援機関での円滑な活動のために、少しでも役に立てば幸いです。

特定技能とはどんな資格


画像引用:法務省 在留資格リーフレット(登録支援機関向け)

これまで日本は、外国人労働者の受け入れにどちらかといえば消極的でした。そのため技術者や研究者といった、特別な技術・知識を持つ専門職に偏重して外国人労働者を認めていたのです。

しかし介護・建設・宿泊など、特定の分野での深刻な人材不足が問題になるにつれ、これまで認可してこなかった一般的な職種でも外国人を採用できるように、新しい在留資格が創設されました。

これが2019年4月から施行された「特定技能制度」が生まれた背景です。

 

特定技能1号・特定技能2号・技能実習の基礎知識

特定技能には、その技能水準に応じて「特定技能1号」と「特定技能2号」という2種類の資格があります。

 

特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

特定技能2号:特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

 

非常にわかりづらい表現ですが、1号の方がより高度な知識と技能を求められ、取得のハードルも高いと考えてください。1号と2号では、許可される在留期間や勤務できる業種などにも違いがあります。

また特定技能と混同されやすい「技能実習」ですが、特定技能が日本企業の労働力確保が目的なのに対して、あくまでも日本の技術を学んで母国の発展に役立てるという「国際協力」の考えに基づく在留資格です。

特定技能1号・2号と技能実習の主な違いを下表にまとめておきますので、しっかりと確認しておいてください。

特定技能1号 特定技能2号 技能実習
在留期間 通算で上限5年 3年が上限だが、更新回数に制限なし 上限5年
技能水準 試験で確認 試験で確認 なし
日本語水準 生活や業務に必要な日本語を試験で確認 試験での確認は不要 なし
家族の帯同 基本的に認めない 要件を満たせば可

(配偶者・子供)

不可
対象業種 特定14業種 建設業

造船・舶用工業のみ

1号:原則制限なし

2号、3号:80種144作業

管理団体 なし なし あり
支援団体 登録受入機関による支援あり 登録受入機関による支援対象外 なし
受入機関の人数枠 基本的に無制限 基本的に無制限 常勤職員数などにより制限あり
転職の許可 同一技能が認められる業種であれば可能 同一技能が認められる業種であれば可能 倒産などのやむを得ない事情以外は、原則不可

参考:出入国在留管理庁 新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
参考:JITCO 外国人技能実習制度とは

 

特定技能評価試験とは?試験についてわかりやすく紹介

特定技能を取得するには、該当する業界の技能試験に合格する必要があります。特定技能2号は特定技能評価試験だけでよいのですが、1号の取得には、「特定技能評価試験と日本語試験」の両方に合格しなくてはなりません。

なお特定技能2号技能実習修了者が特定技能1号へ変更し、引き続き日本で労働を希望する場合は、「特定技能評価試験と日本語試験」の両方が免除になります。

特定技能評価試験は、各業種ごとに管轄省庁と試験実施機関が異なります。詳細は下記にまとめた業種ごとの試験要領で確認してください。

所轄省庁 分野 技能評価試験実施要領
厚労省 介護 http://www.moj.go.jp/content/001290900.pdf

 

http://www.moj.go.jp/content/001290901.pdf

ビルクリーニング http://www.moj.go.jp/content/001303216.pdf
経済産業省 素形材産業 http://www.moj.go.jp/content/001311747.pdf
産業機械製造業
電気・電子情報関連産業
国土交通省 建設 http://www.moj.go.jp/content/001312155.pdf
造船・舶用工業 http://www.moj.go.jp/content/001308359.pdf
自動車整備 http://www.moj.go.jp/content/001309264.pdf
航空 http://www.moj.go.jp/content/001307260.pdf

 

http://www.moj.go.jp/content/001307261.pdf

宿泊 http://www.moj.go.jp/content/001291397.pdf
農林水産省 農業 http://www.moj.go.jp/content/001316152.pdf
漁業 http://www.moj.go.jp/content/001316153.pdf
飲食料品製造業 http://www.moj.go.jp/content/001307258.pdf
外食業 http://www.moj.go.jp/content/001310046.pdf
日本語試験(共通)

 

介護分野日本語試験

http://www.moj.go.jp/content/001291461.pdf

 

https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000499292.pdf

 

参考:JITCO 7 分野別所管省庁及び試験実施機関について

参考:法務省 試験関係

 

登録支援機関の役割とは


参考:在留資格 が創設されます

日本で働く外国人労働者と密接に関わる登録支援機関と特定技能所属機関ですが、両者は一体なにが違うのでしょうか。

特定技能所属機関は、特定技能資格を持つ労働者の受け入れ機関(働く企業)のこと。対して、本来特定技能所属機関がおこなう義務のある外国人労働者の支援を、委託を受けて代わりにおこなうのが「登録支援機関」です。ただし、あくまでも支援するのは1号特定技能外国人であり、2号特定技能外国人は適用外になります。

登録支援機関がおこなう具体的な支援は、「入国手続きなどの事前ガイダンス」「出入国時の送迎」「住居の契約や銀行口座開設」など、全部で10項目あります。

登録支援機関は、10項目すべて支援できることが許可の条件です。「うちの登録支援機関では、送迎だけやります」などということは認められませんので注意しましょう。

参考:出入国在留管理庁 支援計画の概要②

 

登録支援機関になるには

登録申請が受理されれば、出入国在留管理庁長官の登録を受けられます。登録期間は5年となっており、以降5年ごとの更新が必要です。

登録拒否事由に該当さえしなければ、登録は個人であってもまったく問題ありません。実際に、後から説明する「登録支援機関登録簿」を見ると、企業に混じって行政書士や社労士の個人事務所がたくさん登録しています。

 

登録支援機関の要件

登録の要件としては、登録拒否事由に該当しなければよく、基本的に犯罪や違反を犯していなければまず問題にはならないでしょう。登録拒否事由の詳細は上記リンクより確認できます。

また登録を受けるための大前提として、下記の2点をクリアーしていなければなりません。

① 法令違反をしていないなど、企業に問題がないこと
② 英語や中国語など、外国人が理解できる言語で支援できること

登録の具体的な要件としては、下記の6つを押さえておきましょう。

 

【登録の要件】
●支援責任者及び1名以上の支援担当者を選任していること
●以下のいずれかに該当すること
・登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に中長期在留者の受入れ実績があること
・登録支援機関になろうとする個人又は団体が、2年以内に報酬を得る目的で、業として、外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること
・選任された支援担当者が、過去5年間に2年以上中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有すること
・上記のほか、登録支援機関になろうとする個人又は団体が、これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められていること
●1年以内に責めに帰すべき事由により特定技能外国人又は技能実習生の行方不明者を発生させていないこと
●支援の費用を直接又は間接的に外国人本人に負担させないこと
●刑罰法令違反による罰則(5年以内に出入国又は労働に関する法令により罰せられたなど)を受けていないこと
●5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し著しく不正又は不当な行為を行っていないことなど

引用:JITCO 登録の要件

 

登録支援機関の届出

登録支援機関の登録申請は、地方出入国在留管理局に書類を郵送または持参します(手数料28,400円を申請時に納付)。代理人による申請も可能ですが、その際は委任状が必要です。

【提出する書類】
1. 登録支援機関申請書
2. 登録支援機関登録申請書
3. 登記事項証明書(法人の場合)
4. 住民票の写し
5. 定款又は寄附行為の写し(法人の場合)
6. 役員の住民票の写し(法人の場合)
7. 登録支援機関の役員に関する誓約書 (法人の場合)
8. 登録支援機関概要書
9. 登録支援機関誓約書
10. 支援責任者の就任承諾書及び誓約書
11. 支援責任者の履歴書
12. 支援担当者の就任承諾書及び誓約書
13. 支援担当者の履歴書
14. 支援委託手数料に係る説明書(予定費用)

各書類は、登録支援機関の登録申請からダウンロードできます。

 

近隣の登録支援機関を探すには「登録支援機関登録簿」をチェック

登録拒否事由に該当しなければ、登録支援機関登録通知書が発行(申請から約2カ月後)され、登録支援機関登録簿に記載されます。登録支援機関登録簿は随時更新され、2020年3月現在で4,046件登録済。法務省のWebサイトで確認できます。

登録簿を見ると、英語・中国語と同じくらいベトナム語に対応している登録機関が多いことに驚きます。それだけベトナムからの1号特定技能外国人が多いということですね。

参考:http://www.moj.go.jp/content/001315380.pdf
参考:http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00183.html
参考:http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00205.html

 

特定技能所属機関の役割とは


参考:出入国在留管理庁 在留資格「特定技能」について

特定技能所属機関とは、登録支援機関の説明でも話したように、特定技能資格を持つ労働者の受け入れ機関(企業)のことです。

本来は特定技能所属機関が、1号特定技能外国人の支援計画作成と実施の義務を負います。ただし、技術指導や労働環境の提供には問題がなくても、適切な支援計画の作成とサポートができる会社はそう多くありません。

だから1号特定技能外国人の支援計画作成と実施に関しては、登録支援機関に委託が認められているのです。いずれにせよ、外国人労働者が日本人と同等の条件で働ける環境を提供できることが、受け入れ機関としての大前提といえます。

 

特定技能所属機関になるには

外国人労働者を受け入れる意思のある企業であれば、誰でも特定技能所属機関になれるわけではありません。契約内容や会社の体制がある一定基準を満たしていることが必須条件となります。

労働者に不利な契約を提示したり、会社がきちんとした受け入れ体制を整えていなかったりすれば、外国人労働者が安心して働けませんから、これらの要件を厳しく審査されるのは、至極当たり前のことといえるでしょう。

 

特定技能所属機関の要件

特定技能所属機関になる要件として、主に下記の4項目が審査されます。

① 契約に関する基準:特定技能雇用契約が適正かどうか
② 機関自体が満たすべき基準:法令厳守など、受け入れ企業としての資質があるかどうか
③ 支援体制に関する基準:外国人労働者が安心して労働できる支援体制が整っているかどうか
④ 支援計画に関する基準:適切な支援計画が立てられるかどうか

 

① 契約に関する基準例
・報酬額、教育訓練への参加、福利厚生施設の利用などについて、差別的な待遇をおこなわないこと
・技能と知識を要する適正な業務に従事させること
・日本人従業員の所定労働時間と同等であること

② 機関自体が満たすべき基準例
・労働関係法令,社会保険関係法令及び租税関係法令を遵守していること
・契約前1年以内に、同職の日本人労働者を意図的に離職させていないこと
・契約前1年以内、もしくは締結後に、外国人の行方不明者を発生させていないこと

③ 支援体制に関する基準例
・外国人が理解できる言語で支援する体制が整っていること
・5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
・支援責任者もしくは担当者が、外国人及び監督者と定期的に面談できる体制があること

④ 支援計画に関する基準例
・支援計画に前述の10項目をすべて記載すること 出入国在留管理庁 支援計画の概要②
・支援計画は理解できる言語でも作成し、その控えを外国人労働者に渡すこと
・支援の一部が他者に委託される場合、委託範囲を明確に示すこと

要件の詳細については、出入国在留管理庁 在留資格「特定技能」についてから、ご確認ください。

特定技能所属機関の届出

特定技能所属機関は、外国人を雇用する前だけでなく、雇用してからも継続して提出する書類があります。
● 特定技能所属機関による受入れ状況に係る届出
● 登録支援機関による支援実施状況に係る届出
● 特定技能所属機関による活動状況に係る届出

これらの提出を怠ると、外国人労働者の受け入れができなくなるだけでなく、改善命令が出される可能性もあります。必ず提出するようにしましょう。

1号特定技能外国人受け入れ時に提出する書類は、受入先が法人の場合、全部で28種類あります。(そのうち該当する書類だけ提出)

下記に主な提出書類をまとめておきますが、提出書類の詳細については、法務省 在留資格変更許可申請「特定技能」で確認して、提出忘れがないように注意しましょう。

1. 申請する特定技能外国人の名簿
2. 在留資格変更許可申請書
3. 特定技能外国人の報酬に関する説明書
4. 特定技能雇用契約書の写し
5. 雇用条件書の写し
6. 事前ガイダンスの確認書
7. 支払費用の同意書及び費用明細書
8. 徴収費用の説明書
9. 特定技能外国人の履歴書

 

特定技能外国人受け入れまでの流れ


参考:出入国在留管理庁  制度概要③就労開始までの流れ

上図の通り、新しく海外から働きにくるのか、これまで日本に在留していたのかによって、求職のアプローチは変わってきます。しかしいずれにしても、まずは求人に応募してきた外国人労働者と契約を結ぶことがスタートです。

 

【雇用契約から勤労開始までの流れ】

① 特定技能所属機関と外構人労働者の雇用契約
② 在留資格申請(新規は交付申請、在留者は変更申請)
③ 地方出入国在留管理局:在留の許可証発行
④ 新規:ビザ発行→入国→雇用開始(在留者は許可後すぐに勤労開始可)

参考:http://www.moj.go.jp/content/001315380.pdf
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000485526.pdf
参考:https://continental-immigration.com/tokuteigino/flows-2/

 

まとめ

これから日本は、急激な人口減少と少子高齢化により、特定の業種において深刻な労働者不足問題に悩まされていくでしょう。それに伴い、外国人特定技能制度が、ますます重要になっていくのは間違いありません。

しかし日本での特定技能外国人の受け入れは、まだ始まったばかりです。多くの受入企業には、特定技能外国人を支援する人材が不足しています。そこで注目されるのが「登録支援機関」なのです。

これからたくさんのベトナムの優秀な人材が、日本での労働を希望するでしょう。ぜひ「特定技能所属機関」と「登録支援機関」についてしっかりと理解して、ベトナム人と日本企業の橋渡しをしていただければと思います。