近年、外国人人材市場において急速に増加しているベトナム人材。では、なぜベトナムが選ばれているのでしょうか。

ベトナム人の優秀さに関しては、別項「人材面」でご紹介しますが、今回は「ベトナム」と言う国家や市場がなぜ日本の人材を供給する市場になりえるのかについて考えてみます。

理由1:地政学的メリット

過去、日本から中国へ進出する企業が多く見られた時期があります。これは、日本と中国の地政学的な近さにもよるところが非常に大きかったように考えられます。この点、ベトナムはその中国と近接しており、地政学的にはほぼ同じ地理的位置づけにあると言って良いと思います。近年、中国人材の人件費高騰が急激に進み、中国人材に対してのメリットが薄れ始めており、チャイナリスクの一つとしても数えられます。

そこで、「チャイナ+1(プラスワン)」としてもベトナムが選ばれています。そのため、従来中国に工場や拠点を持っていた企業でも、ベトナムに「+1」として進出する企業が数多くみられるようになり、更には最近海外初進出する企業でも当初よりベトナムを選ばれる企業が増えてきました。

また、ベトナムは、北部にある首都のハノイが、その代表都市で、日本から直行便がANA、JAL、ベトナム航空の他LCCが就航しています。また、ハノイ近郊にあるハブ空港のノイバイ国際空港と結ばれている日本の都市としては、東京(羽田・成田)、大阪(関西)、名古屋(中部)、福岡(福岡)」等から直行便(空路)が就航しており、その所要時間も5~6時間で到着することが出来ます。

同様に、ベトナムのもう一つの大都市で南部のホーチミンも同様に、近郊にあるタンソンニャット国際空港と日本がハノイと変わらず就航しています。地政学的に中国、台湾、韓国に次ぐ次世代の人材市場であることが分かります。

理由2 政治的に安定している

ベトナムと言えば、1955年から1975年の20年間に及ぶ内戦や大国の代理戦争の舞台にもされ、戦禍渦巻く国としてのイメージがある経営者の方々も多いと思います。しかし、終戦を迎えて以降40年余りの月日が経過しており、ここ何十年かは政治的に非常にバランスが取れた安定政権になっています。

現在ベトナムは共産党一党制で、その共産党が指導する社会主義国として安定しています。指導部である共産党内の指導体制は、構成員に地域的バランスが配慮されたものとなっており、権力分散が上手に配されていると言って良いでしょう。この事を実証するように、その治安体制が他の東南アジア各国と比べて優れているという評価がなされています。

理由3 豊富で質の高い労働力の確保が容易

次に、豊富でしかも質の良い労働力が容易に確保できることが上げられます。東南アジア各国では、若手労働力の豊富さだけで見れば色々な国があげられますが、その質においてはベトナムが群を抜いています。例えば、ベトナム人の識字率は95%を超えており、これは年齢が若くなればなるほど高くなります。更にベトナム人の若者の気質として、向上心が高く自然に早期に技術習得できてしまうという特質があります。

このことは、現在ベトナムの若者たちの生活習慣を見ても分かります。学生は放課後、すでに就労している人は終業後に自己研鑽のために外国語、パソコン技術、会計理論の習得のため専門学校に通っている人たちが非常に多いということ言うことです。その中で、日本語教育が近年盛んに行われており、数多くの日本語学校が都市部を中心に多く存在しています。

理由4:親日家が多く日本に好意的

日本という国に対する印象が良いということが上げられます。これは、ベトナムにとって日本は最大のODA供与国であり、日本の援助によって整備された国道、橋梁、電力設備など、現在ベトナムの工業力発展の礎を築いた国でもあります。

このことは、ベトナム政府として日本に対する信頼感が高く醸成される結果となりました。また一般国民にとって日本は、生活・文化・経済の発展に大きく貢献してくれたという印象が強く、親日家が多くなっています。このことは、何かと反日活動を起こして問題化する中国(チャイナリスクの一つ)に比べ、安心して日本企業が活動できる下地になっています。

理由5 国内市場の成長が期待できる

最後に、ベトナム自体の国内市場の成長が著しいことが上げられます。現時点でベトナムにおける30歳以下の人口は総人口の70%前後を占めています。人口が9000万人以上あり、その増加率も高く、年間100万人から150万人のペースで増え、2020年には1億人を突破するほどの勢い。

それに伴い、ベトナム国内における消費市場も拡大の一途を辿ることが予想され、その市場を狙った進出も増加しています。日本で採用したベトナム人材の帰国に合わせて、ベトナム法人を設立する企業が出てきたり、ベトナム進出を視野に入れ、ベトナム人材を日本で育成する動きも活発化しています。