少子化・人手不足と言われる現代の日本において、「ベトナム人エンジニア」は重要な労働力と言われています。今回はエンジニアの中でも技術系の分野において、「ベトナム人を雇用するメリット」と「雇用する為の手順」についてご紹介します。
厚生労働省が発表した2019年の人口動態統計によると、死亡数が出生数を上回る「自然減」が51万2千人に達し、戦後初めて50万人の大台を超えました。
少子化・人口減の一途を辿る今、日本の労働力不足は深刻な問題となっています。
そんな中、日本で働くベトナム人エンジニアが増加していることをご存じですか?
ひとくちにエンジニアといっても専門分野は多岐に渡っており、IT系の「システムエンジニア」、建築・土木業界でCADを使って図面を描く「CAD設計士」、旋盤やマシニングセンタを操作する「技能士」まで様々です。
今回は、その中でも比較的外国人労働者に仕事を依頼しやすいと言われる「製造系の技能士エンジニア」についてお話したいと思います。
なぜ今、日本にベトナム人エンジニアが増えているのか?そして採用するにはどうすれば良いのか?といった疑問を解決していきますので、是非最後までご覧ください。
ベトナム人エンジニアが増えている理由
なぜ今の日本にベトナム人エンジニアが増えているのか、その理由をご紹介します。
理系分野に精通したベトナム人の増加
ベトナム人の理系分野に関する知識は年々向上しています。
2012年、2018年に実施されたPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる学習到達度調査では、「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の2分野において非常に優秀な成績を残しました。
理系分野に関する知識が向上した事で請け負える仕事の幅が増え、海外に進出する人材が増えたと考えられます。
ベトナム人には親日家が多い
海外に働きに出る中で特に「日本」が選ばれている理由の一つとして、ベトナム人には非常に親日家が多いと言われています。
電通が2015年の行ったジャパンブランド調査では「日本に対する好意度が最も高い地域」に2年連続でベトナムが選ばれました。
イオンのベトナム進出や日本のアニメ放送によって、ベトナム人の日常に日本の製品が寄り添っている事も大きな要因です。
日本の文化に触れるきっかけが多く、日本に対する安心感があるとも言われています。
日本の雇用環境の変化
また、ベトナム人をはじめとした外国人労働者が増えている要因の一つとして、日本の労働環境の変化も上げられます。
2018年に追加された新たな在留資格「特定技能」は、従来の就労ビザで認められていなかった14の分野において在留資格が得られるようになりました。
また、技能実習生を取り巻く環境も年々改善されています。
少子化の一途をたどる日本にとって、外国人労働者は貴重な戦力となっているのです。
参考:https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html#PISA2015(国立教育政策研究所)
参考:https://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0622-004078.html(電通ジャパンブランド調査)
参考:https://life.viet-jo.com/column/asia-plus/504(ベトナム生活情報サイトVIET JO Life)
参考:https://www.jica.go.jp/vietnam/office/others/pamphlet/ku57pq0000221kma-att/Japan_Vietnam_Partnership_To_Date_and_From_Now_On_j.pdf(国際協力機構)
参考:https://www.jitco.or.jp/ja/skill/(国際研修協力機構)
参考:http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri05_00014.html(法務省)
「社員」としてベトナム人を採用するメリット
外国人労働者を雇う場合、最初に頭に浮かぶのは「技能実習生」かと思います。
確かに技能実習生は手軽に海外から労働力を確保することができる手段の一つです。
しかし、ここで一つ技能実習生ではなく「社員」として向かえることも考えてみてはいかがでしょうか?
「社員」としてベトナム人を採用することは、実は企業にとって非常に大きなメリットがあります。
技能実習生と社員の違いとは
「技能実習生」と「社員」ではどういった部分に違いがあるか説明していきます。
技能実習生より長い期間働くことが可能
まず、技能実習生は働くことができる期間に制限があります。
技能実習生が働くことが出来るのは最大でも5年です。
滞在資格 滞在期間
技能実習1号 1年 試験に合格すれば2号の資格を取得
技能実習2号 2年 試験に合格すれば2号の資格を取得 ※一時帰国あり
技能実習3号 2年 帰国
せっかく仕事を覚えても5年でいなくなってしまう為、短期間での戦力には充分でも長期的に見た際に5年ごとに「新しい人に仕事を教える」というコストが発生します。
技能実習生のまとめ役として適任
技能実習生はあくまで「実習」の為、責任を持った仕事ができません。
また、日本語や日本の文化に対する認識が不十分な場合もあります。
そんな技能実習生と日本人の社員とつなぐ存在として、ベトナム人の社員をまとめ役として雇用することは非常に有益です。
即戦力が期待できる
技能実習生は業務の中で技術を身に着けてもらうことが目的です。
そのため、当然ですが即戦力には期待できません。
「特定技能」の在留資格を取得している外国人労働者は「一定レベル以上の日本語と技術」の試験を突破している為、即戦力として雇用することが可能です。
ベトナム人を採用する手順
ここまでベトナム人を雇用するメリットを記載してきましたが、そもそも「外国人ってどうやって雇えば良いの?」とお考えの方もいるかと思います。
それでは実際に雇う為にはどうすれば良いか、その流れをご説明します。
ベトナム人採用までの流れ
外国人の雇用には2つのパターンがあります。
日本国内から各種サービスを利用して雇用する場合と、実際に現地に赴き通常の採用活動と同じように現地の人材を雇用する場合です。
ここでは日本から雇用する場合の流れについてご説明します。
1.人材紹介会社やマッチングイベントを活用して人材を探す
今は外国人労働者と日本の企業を繋ぐ人材紹介会社がたくさんあります。
「外国人 人材」等で検索すると出てきますので、ご自身にあったサービスをご利用下さい。
その際、ご自身が求める技能や条件を事前にまとめておくとスムーズです。
面接はスカイプ等を利用してWEB上で行う場合と、直接会って面接する場合の2パターンがあります。
2.就労ビザが取得可能か確認
雇用したい人物が決まったら、まずは就労ビザが取得可能か確認します。
既に日本にいる人材の場合は必ず「在留カード」を持っているはずなので提示してもらいましょう。
海外から呼び寄せる場合は、以下の2点を満たしているか確認が必要です。
・想定する職務内容が在留資格(就労ビザ)に合致した内容か
・学歴や職歴が要件を満たしているか
就労ビザ申請においては、この2点の内のいずれかの条件を満たしていることを文書で証明しなければいけません。
例えばエンジニアの場合は在留資格「技術・人文知識・国際業務」が必要となりますので、「教育」や「研究」の在留資格を持っていたとしてもエンジニアとして勤務することは出来ません。
また、「技術・人文知識・国際業務」を取得する為に必要な条件として、以下のいずれかを満たしている必要があります。
・情報工学系の学部を専攻し、4年制大学もしくは短期大学を卒業している
・日本国内で情報工学系の科目を専攻して専門士の資格を取得している
・エンジニアとして10年以上の職務経験があること
専門学校の場合は必ず「日本」の専門学校である必要があります。
外国に滞在したまま、通信教育で日本の専門学校の教育を受けたケースは当てはまりません。
海外から外国人労働者を受け入れる為の就労ビザは日本の「入管局」に対して申請する必要があります。
入管局に提出する「在留資格認定証明書交付申請」には、外国人の学歴や職歴を証明する証明書類として、卒業証書や在職証明書を提出する必要があります。
学歴や職歴に嘘があるとこの申請が通りませんので、必ず書面で事実関係を確認して下さい。
3.雇用契約書の取り替わし
次に、労働契約を締結します。
雇用契約書を作成したら、必ず本人に雇用条件を確認して貰った上で署名をして貰って下さい。
ここでの説明が不十分だと後で問題となる可能性があります。
作成した雇用契約書は必ず雇用する側・雇われる側の双方で保管しておく事が重要です。
4.就労ビザ申請
雇用契約を取り交わしたら、就労ビザに関する手続きを行います。
必要書類を揃えて入管局に提出しましょう。
書類には「パスポート」や「在留カード」の他に、「会社側が用意する雇用理由書」「外国人労働者側が用意する申請理由書」等が必要になります。
詳しくは出入国管理庁のHPをご確認下さい。
手続きが不安な場合は行政書士に代行を依頼することも可能です。
なお、既に同様の職種でビザを持っている場合は、特に何らかの手続きを行う必要はありません。
参考:https://www.eriw-office.com/category/1229823.html(行政書士事務所HP)
採用時の注意点
最後に、外国人労働者を雇う際に気を付けるべきポイントをご紹介します。
外国人労働者を採用する際には「技能実習生」からの採用か、「在留資格と業務内容が合っているか」等の確認が重要となります。
技能実習生から採用するには条件がある
以前まで、技能実習生は5年の期間を終えると必ず帰国する必要がありました。
そのため、基本的に技能実習生を社員として雇用することはできませんでした。
しかし、2018年に追加された「特定技能」により、「技能実習2号」を修了している外国人は試験を免除の上で「特定技能1号」に移行することができるようになりました。
特定技能を取得する事ができれば社員として雇用することが可能になります。
技能実習生の在留資格のままで社員として雇用することはできませんのでご注意下さい。
在留資格と業務内容の確認が必要
「特定技能」の在留資格を取得していたとしても、求める業務内容と異なる資格では意味がありません。
例えば「農業」の在留資格を持っている人に「自動車整備」の仕事を依頼することはできません。
雇用する前に、在留資格と業務内容が一致しているか必ず確認するようにしましょう。
安価すぎる賃金は離職のリスクがある
少し前まで、外国人労働者は非常に安価で雇用できるメリットがありました。
しかし「特定技能」の在留資格は転職が認められています。
安価すぎる賃金を設定すると、より条件の良い企業へ移ってしまうリスクがあります。
優秀な人材を確保する為には、一定基準以上の賃金を設定するようにしましょう。
最後に
さて、今回はベトナム人エンジニアが増えている理由と、採用する場合のポイントについてご紹介しました。
●ベトナム人は親日家が多く、日本も受け入れる体制を強化している
●技能実習生ではなく「社員」として雇用するのは大きなメリットがある
●外国人労働者を雇用する場合は在留資格と業務内容をしっかり確認する
ベトナム人の真面目で勤勉な所は、人手不足と言われるエンジニア業に非常に適した国民性と言えます。
「中々人材が集まらない」「すぐに人が辞めてしまう」とお困りの場合は、ぜひ一度ベトナム人の採用も検討してみてはいかがでしょうか。