連日、問題だらけの制度として野党からの厳しい突き上げに合っている「外国人技能実習制度」。ここで、この制度について整理してみたいと思います。元々は、日本国内で就労しながら技術、技能、知識を学んでもらおうと設立された制度。
主に、発展途上国の若者に日本の伝統的な技術だけでは無く、先端技術や技能を身につけてもらい、出身各国の発展に寄与して貰いたいとの国際協力の一環として制定されたのですが、世の常で制度を悪用し、いつしか利権が生まれ、実習生を搾取する構造が生まれてきました。
ここでは、いま話題になっている社会問題には踏み込まず、そもそも「外国人技能実習制度」とはどういったものなのか、という点について数回に分けてご紹介したいと思います。
1.技能実習制度の歴史
そもそも、近年に至るまで外国人技能実習制度は「入管法(出入国管理及び難民認定法(1951年政令第319号)」とその省令レベルを根拠法令として実施されてきました。特に、「技能の実習」と言う観点からは、1960年代後半からトヨタ自動車や松下電器(当時)等で海外現地従業員(外国人就労者)を日本に招聘し、社員教育の一環として確立された研修制度が現地でも日本国内でも非常に高い評価を得たことが始まりとなります。
この私企業での成功が日本国政府でも認められ技能実習制度が1993年に制度化されました。更に2017年11月1日に施行された現行法である「技能実習法」とその関連法規が整備され、ますます多くの外国人技能実習生が本邦に来日することになりました。
2.技能実習制度の基本理念
この当時から現在に至るまでの一貫した技能実習制度の立法目的及び趣旨は、その基本理念に「我が国で培われた技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進」と言うことに有り、法第3条第2項には、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と記されています。
3.技能実習法の概要
2017年11月に施行された「技能実習法」の概要は、大きく3つに分かれ「技能実習の適正な実施」「技能実習生の保護」「制度の拡充」のパートに分かれています。各々日本における制度の経験から考えられたものと、現在の日本における世界への貢献と言う観点から立案された法律になります。
以下にはその概略をお示しします。
(1)技能実習の適正な実施
- 技能実習の基本理念、関係者の責務及び基本方針の策定
- 技能実習計画の認定制
- 実習実施者の届出制
- 監理団体の許可制
- 認可法人「外国人技能実習機構」の新設(外国人技能実習機構のホームページ)
- 事業所管大臣等への協力要請等の規程の整備及び関係行政機関等による地域協議会の設置
(2)技能実習生の保護
- 人権侵害等に対する罰則等の整備
- 技能実習生からの主務大臣への申告制度の新設
- 技能実習生の相談・通報の窓口の整備
- 実習先変更支援の充実
(3)制度の拡充
- 優良な監理団体・実習実施者での実習期間の延長(3年→5年)
- 優良な監理団体・実習実施者における受入れ人数枠の拡大
- 対象職種の拡大(地域限定の職種、企業独自の職種、複数職種の同時実習の措置)
参考:公益財団法人 国際研修協力機構(https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/index.html)