今回は、現地国において日本での外国人技能実習制度を利用しようとする者を適切に日本に送り出すことのできる送り出し機関についてご紹介します。

2017年11月の「技能実習法」にもこの送り出し機関に関する規定が盛り込まれており、その要件を中心に概説します。
 

送り出し機関の要件

  1. 所在する国又は地域の公的機関から推薦を受けている必要がある。
    該当国でのお墨付きがなければそもそも送り出し機関として認めないという姿勢が伺えます。
  2. 制度趣旨を理解して候補者を適切に選定し、送り出すことが可能な組織であることが求められる。
    該当国内でも組織的に活動し、候補者選定を機能的に行える組織を求めています。
  3. 技能実習生等から徴収する手数料等の算出基準を明確に定めて公表し、技能実習生に明示して十分理解させることが求められる。
    このことは、送り出し機関での実習生に対する金銭的搾取を防止し、実習生本人の了解の下でなければならないとの規定です。
  4. 技能実習修了者(帰国生)に就職の斡旋等必要な支援を行う必要がある。
    単なる「送り出し機関」と言えども、実習生の帰国後のアフターフォローを求めている点注目されます。
  5. 法務大臣、厚労大臣又は外国人技能実習機構からのフォローアップ調査、技能実習生の保護に関する要請などに応じる必要があります。
    いわゆる実態調査を送り出し機関は拒む権利が無い旨の規定になります。
  6. 当該送出機関又はその役員が、日本又は所在国の法令違反で禁錮以上の刑に処せられ、刑執行後5年を経ていること。
  7. 当該送出機関又はその役員が、過去5年以内に-保証金の徴収他名目を問わず、技能実習生や親族等の金銭又はその他財産を管理しないことが求められます。
    この点は、同様の扱いをされていない旨の周知を技能実習生にも確認しなければなりません。これは過去の送り出し機関による不正・不法事案として国際的に問題になった事実を経て規定された内容になります。
  8. 技能実習に係る契約の不履行について、違約金や不当な金銭等の財産移転を定める契約をしないこと。
    この点は、同様の扱いをされていない旨の周知を技能実習生にも確認しなければなりません。これも7.同様に過去の不正事案を反証として規定されています。
  9. 技能実習生に対する人権侵害行為、偽造変造された文書の使用等を禁止しています。
  10. 所在国または地域の法令に従って活動を行うことが求められます。
  11. 送り出し機関として、取次の為に必要な能力を有することが求められます。

参考出典: https://www.jitco.or.jp/ja/regulation/send/
 
 
さらに、送り出し機関との付き合いにおいて注意が必要なことは、監理団体が送り出し機関からキックバックを受け取ることを固く禁じており、違反した場合は厳格な処罰が行われる点です。また、ブローカーの存在も厳しく制限しています。
 
以上が、送出し機関に関わる要件ですが、現在はこれらが順守されているか監視する仕組みも人員も足りないため、ルール違反が横行しています。それが、金銭的負担として大きく実習生にのしかかっているのです。現在国会で大きく取り上げられている問題の原因が、ここにあります。

ここで見たように本制度は、改善を経て現在に至っています。それにもかかわらず、依然として多額の金銭負担を負う実習生は後を絶ちません。結局は、運用する人のモラルにかかっているのです。とはいえ、そのモラルを海を隔てた国に求めても報われることはありません。足を運び、心ある送出し機関を見つけるしかないと言えるでしょう。