現在、各種法律が整備され、多くの外国人技能実習生が来日しています。新たな在留資格「特定技能」の創設にあたり、反対派から最も多くの指摘を受けたのが本制度。日本企業による搾取や実習生の失踪など、よくも今まで見過ごしてきたな、と言いたくなるほど次から次へと新たな事実が出てきました。
報道によってはじめて本制度をお知りになられた方は、負の側面しか見えないかもしれません。しかし、本制度が日本とベトナムにとって、大きな役割を果たしてきたことも事実。今回は、あえて外国人技能実習生及び制度の全般についてプラスの面を見ていきたいと思います。
目次
【日本側から見た良い点】
労働力不足を補う
技能実習制度は、あくまで実習であり、労働を目的とする制度ではありません。まず、これが大前提。しかし、人口減少が際立っている日本において生産人口(労働力として働ける人口)の大幅減は、企業にとっての死活問題となっています。
特に「3K(きつい、汚い、危険)職場」と言われる現場などでは、すでに外国人なしには立ち行かなくなっています。そうした職場を抱えている経営者の方々にとって、実習という形はとりつつも、人材不足、労働力不足を補う有効な人材確保策として本制度は大きな役割を果たしています。
技術・技能の伝承
3K職場と言われる職場の多くは1次、2次産業に集中しており、古く日本の英知が集積された職場が多く存在します。その技術、技能を外国人技能実習生に伝えることで、現時点での人材不足、技能・技術の伝承が可能となります。
伝承した結果、彼らの国々でその技術・技能が活かされその国々の発展の礎ともなることは大変大きな良い点だと言えます。ただ実際には、日本で実習した技術や産業がそもそもベトナムに存在せず、身に付けた技能を活かすことができないという矛盾も。本制度の問題点の一つとなっています。
雇用に関しての費用が総合的に低く抑えられる
ほぼ外国人技能実習生の雇用については、就労する都道府県における最低賃金が適応されています。日本で最低賃金と言うと聞こえは悪いですが、送り出し国では相当な高賃金になります。
言葉の壁はあるものの、技能実習生として来日する外国人のほとんどは働きながら技能を身につけようという目的があるので、ある意味「がむしゃら」に働く傾向があり、労働時間を抑える必要の出るくらい働くことを考えるとこの点も大きなメリットだと思われます。
【送り出し国から見た良い点】
発展途上国での負の連鎖を断ち切る
発展途上国ではいつまでも負の連鎖が続きます。つまり経済的な貧しさはさらなる貧しさ、搾取を生む要因になります。そうした繰り返しを日本のこの制度を利用して断ち切ることで、より豊かな生活へと導くことが可能となります。
日本語と技能を身に付けて帰国することで、より高い給与で現地企業に就職できるようになる。本来技能実習制度が目指すべき方向性です。
送り出し機関の充実
本制度下では、ともすれば搾取の対象となりやすい外国人材の人権を守るために、人材ブローカーが外国人材を技能実習生として送り出せないようになっています。教育設備を備え、ベトナム政府の許可を得た優良な送り出し機関のみが、技能実習生を送り出せるようになっているのです。
こうした機関が現地における人材募集を積極的に行うことが現地における日本のプレゼンス向上に資することになります。ただ、この許認可が既得権益となり、実習生の支払う費用の高騰を招いている原因となっていることも認識しておかなければなりません。
技能・技術の輸入
日本の優れた技術・技能を自国民に習熟させることで、自国の発展に寄与させることは、この制度の大きな意義となっています。日本の技術が彼の地で生き、その国が豊かになる。そんな理想的な循環が生まれれば、この制度が両国にとって欠かせないものになるのだと思います。