日本における本制度は、古くからその原型を持っていました。しかし「外国人技能実習制度」は、あくまでも「国際貢献の一環」として発展途上国の若者に日本の誇る技術、技能を身につけさせ、帰国後に自国の発展に寄与してもらいたいという趣旨でスタートしています。今もなおその精神は変わりません。

しかし、種々の歴史的変遷を受ける中、課題点が顕在化してきています。以下に、現在もなお残る課題についてお示しします。

失踪による不法在留化

多くの外国人技能実習生全てが、全員共に技能を身につけ、習熟度合を上げて無事帰国するかと言えば、一部の外国人技能実習生では、在留資格が無いにもかかわらず日本で就労し続けるケースがあります。組織的に万引きを繰り返し、転売、巨額の金銭を得ていた窃盗グループが逮捕されるという事件も発生しています。このグループは、失踪実習生と留学生で構成されていました。

技能実習生の全体数が増えれば増えるほど、その不法滞在者数も自然と増えることになります。実習期間中にドロップアウトしてしまう外国人もいて、この事態の収束をはかることが喫緊の課題でもあります。

本国での多額の借金

このような犯罪や失踪を起こさせる最も大きな原因は、彼らが本国で支払う費用にあります。彼らの大部分は貧しい家庭の子弟が多く、来日する為の費用を借金で補うことがほとんど。概ね来日の為に支払う金額は、およそ50万円~100万円と彼らにとっては途方もない額に。

2018年の最新のベトナムおける最低賃金は、 首都ハノイのある地域(規定が最も高い地域)でも、月額398万ドン(1ドル22,765ドン、1ドル110円換算)で、約19,200円/月という金額です。こうした現状からみても、日本で実習をするために支払う借金がいかに大きいか分かるでしょう。

この中には、送出し機関のブローカー、監理組合が来越した際の接待費など、本来支払う必要のない金額が含まれている点が、大きな問題としてマスコミにも取り上げられました。実習生は、日本への渡航前から、借金返済のため、少しでも多く稼がなければ、という切迫した状況に追い込まれているのです。

悪質な招聘企業

外国人技能実習生を受け入れる企業側にも課題があります。例えば「残業代不払い」の問題。技能実習生の目的は、制度の趣旨はともかく、“出稼ぎ”にあるため、残業をいとうことはありません。しかし、中にはこうした実習生の状況を悪用し、行き過ぎた過重労働をさせ、さらには残業代金を支払わない、カウントしないといった悪質な企業が存在します。

実習生は、企業が実習停止、帰国をちらつかせば、泣き寝入りするしかありません。残業代の不払いだけでなく、原発事故後の「除染作業」等に外国人技能実習生を送り込むような場合があったことも問題になりました。この他、危険の伴う作業現場に事前説明や適切な指導、教育無しに就労させるケースも(アスベスト除去作業など)。

こうした問題を受け、OTIT(外国人実習機構)の取り締まりが、厳しさを増すようになってきました。今後の改善が期待されるところです。

以上、課題点を列挙しましたが、これらを法律だけで排除するには限界があります。送出し機関、監理団体、受け入れ企業の3者が常識的なモラルを持ち、細やかな対応することが唯一の解決策と言えるでしょう。