現在、介護人材不足を補うための最も有効な制度として期待されているのが、外国人技能実習制度。今回は、この外国人技能実習生制度について、簡単にご紹介し、そして、わが国における介護市場に対するメリット・デメリットを考えてみます。
技能実習生とは
外国人技能実習制度では、日本の技術や技能を身につけたいと思う外国人が来日して、働きながらそれら技術・技能を学ぶことを指します。技能実習生は5年間の実習期間が設けられており、その5年間を通じて学ぶ機会を与えられるとともに、給与が支払われるという仕組みになります。
わが国の全技能実習生は、2016年には既に約25万人の技能実習生が働きながら給与を得て技術習得に努めています。介護分野においては、長らく技能実習生が認められていなかったため、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国からEPA(経済連携協定)による受け入れだけでした。
しかし、2017年11月に、外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加。2019年4月からは、特定技能による受入も開始され、外国人に対して介護分野における仕事への門戸が一気に開かれるようになったのです。
技能実習生に関するメリット
第一にはやはり、慢性的な人手不足が解消される点。技能実習生は、初級程度の日本語力しかないため、日本人と同等の働きを期待するべくもありませんが、それでも日本人介護士の補助として入ってもらうだけで、現場の負担を軽減できるという大きなメリットがあります。そして、若くて向上心旺盛な技能実習生を受け入れることにより、介護ビジネスに携わる企業自体の活性化が期待できるということが言われています。さらに、介護ビジネス界における相互扶助や相互連携が増えることで業界自体の発展に役立つとされています。
また、5年間の実習期間という期間制限はあるものの、毎年受け入れることで実習制度自体の運営やノウハウが蓄積され、代々受け継がれていく文化が醸成されます。また、介護に関する日本固有の技術や技能を外国人実習生に学ばせることで、国際貢献できるとともに、自社の国際展開も視野に入れることが可能になるというメリットが考えられています。
技能実習生に関するデメリット
日本語レベルが初級程度であることでしょう。介護は、何より人をケアする仕事。日本語でのコミュニケーションがうまく取れずに、大きな事故につながる可能性も否定できません。長らく介護分野において外国人技能実習生の受入が進まなかった理由もここにあります。今でも、外国人の受入に慎重な介護施設はまだまだ多いと言えるでしょう。
その他に、書類が多く煩雑であるとか、来日から就労現場配属までに数カ月かかるとか、採用コストが日本人よりも増えるといった、他の職種でも挙げられる外国人技能実習生受入のデメリットがあります。