多くの外国人就労者に接するにつけ、いわゆる発展途上国からの来日者全般に言えることですが、来日当初ほぼ全ての人がシャイでおとなしい印象を受けます。初めて訪れる国(日本)で自身を強調し、我を出す人は稀です。まるで「借りてきた猫」のような状態になっている場合が多いようです。
その後半年、1年と長く付き合い始めると、その方々の良い所、悪い所が見えてきます。このことは、各外国人就労者が仕事にも慣れ、日本での生活環境にも慣れ、彼ら個人の個性が出始めた証です。
この時になって、「えっ、こんな人だったの?」と、想定外の驚きをなくすために、ベトナム人に関してその気質を中心に、長所と短所をお伝えしたいと思います。
目次
就労者としてのベトナム人の長所
(1)真面目で勤勉
ベトナム人は何といっても「真面目でよく働く」と言われます。100人のベトナム人がいて、全ての方々が真面目で、よく働くわけではありませんが、多くの外国人就労者や、日本における非正規雇用の若者を見ていて、その比較でトナム人就労者は、「真面目でよく働く」という印象が持たれているようです。
もちろん、経営者や人事担当者、会社の同僚・先輩等の意見アンケートなどでも、この点が強調される点になります。
(2)手先が器用
多くのベトナム人は手先が非常に器用で細かな仕事ができます。また総じて視力も良いベトナム人が多く、就労に関しての利点と言われます。
ベトナムでは、我々が驚く物や量を積載しているバイクをたくさん見かけますが、この積載を可能にしているのが、独自に作り出した積載用金具。既存の物を工夫、改良して、効果的に使用するのにベトナム人は長けているように感じられます。
(3)日本人と価値観が近い
宗教的な問題として前回も取り上げましたが、ベトナムにおける宗教は仏教(大乗仏教)を国民の大部分が信仰しています。
この他にはカトリック教やカオダイ教(地場宗教)等。ベトナムにおける仏教が日本と同じ大乗仏教であることから、タイ・カンボジア等で信仰されており小乗仏教(上座部仏教)とはやや異なることから、日本での生活全般にわたる慣習・礼法・精神世界を理解しやすくなっています。
就労者としてのベトナム人の短所
さて、今回は前回に引き続きベトナム人気質についてご紹介したいと思います。前回は良い点ばかりを列挙しご紹介しましたが、すべての人が完璧なわけもなく、日本人でも、ベトナム人でも良い面があれば、悪い面もあるのは当然です。
ここでは、就労という組織行動の側面でベトナム人がどうなのかを見たいと思います。今回は前回とは異なり、日本人の目からはやや悪いと思える側面をご紹介したいと思います。
(1)会社よりも個人
ベトナム人は企業組織と言う「団体」よりも「個」に重きを置く風があります。会社への帰属意識よりも、個人のスキルアップ、成長、収入アップが優先。せっかく教育したのに、すぐに転職されたなんて話もあるくらいです。
ただ一方で、家族・親戚といった身内を大切にするので、社内の人間関係においてプライベートに踏み込んで、おせっかいなほどウェットな関係づくりにつとめると、家族のように信頼し、頑張ってくれるようになります。
(2)「報連相」ができない
ベトナム人は、「報連相」が上手く出来ません。つまり、ビジネスコミュニケーションが上手く取れません。日本人にとって当たり前のビジネスリテラシーが欠如しているため、業務上でストレスを感じることがあるかもしれません。
しかしこれは、ベトナムでそれらを教える教育や研修がないから。改善できないものではなく、会社側からのアプローチとして、また日々のルーチン業務として、報告、連絡、相談を行わせるようにし、次第に学習させることでこの部分を克服していかなければなりません。
(3)プライドが高い
ベトナム人はプライドが高い人が多いと言われます。ミスや知識がないことを「恥」と考えるところがあり、不明な点があっても、その都度確認せず、自分で勝手に判断して進めてしまう傾向があります。それによってミスをしても言い訳をして、認めませんし、謝りません。
しかし、ここで声を荒げて人前で怒鳴ってしまうと、逆効果。我々が思う以上にショックを受け、後々の関係に支障をきたす恐れがあります。誤った方向に進んでいたり、作業が滞ったりしていないか、最初のうちは作業状況をこまめにチェックし、大きなずれが生じないようにしてください。
上記にあげた以外にも、「時間にルーズ」「言われたことしかしない」「短期的な利益に目が走り、長期的な利益を求めない」なども、言われます。ただ、これらは特に「ベトナム人に限って」というものではなく、東南アジア出身の就労者に共通する部分でもあります。
外国人である以上、日本人と同じように考えていては、溝は深まるばかり。日本人と異なるこれらの気質を踏まえ、お互いの理解を深め合えば、彼らはこれ以上ない戦力となるはずです。