前回までで概ねベトナムという「国」、「人」に関しての概略を紹介してきました。

ここでは、ベトナムの人々を日本における就労者として見た場合、その能力という視点から見た場合をご紹介したいと思います。

 

ベトナム人の就労者としての特徴

よく言われることですが、東南アジアのみならず多くの海外からの「出稼ぎ労働者」は、総じて日本の就労に対して、向き不向きがあるようです。

ここで「出稼ぎ労働者」と言う言葉を使いましたが、日本では過去多くの「出稼ぎ外国人」を迎え入れた経験があります。そうした歴史の経過から見て、ベトナム人の「働く人」としての能力を見ると、高いランクに位置すると考えられます。それは、創造性や突出した技術力を持っているという意味ではなく、現場作業をこなすという意味において。

こうした背景には、ベトナムの経済構造が大きく影響していると思われます。ベトナムでは、自動車にしろ、家電にしろ、自前の産業が十分に育っているとは言い切れません。まだまだ外資系企業頼みで、その中できちんと業務を遂行できる知識や経験、または下請け企業として、一定水準レベルの物を仕上げるといったことが重視されています。そのため、大学などの教育機関では、最先端の開発を手掛けるというよりは、現場での実務をこなせる職業人を育てることに主眼を置いたカリキュラムが採用されています。

そうであるからこそ、人手不足の日本のものづくりや一次産業の現場とベトナム人の職能がマッチし、彼らが活躍しているのです。

 

ベトナム人の環境適応能力

ベトナム人の就労者としての特徴、実力についてご理解いただけたかと思いますが、そんな彼らでも日本に来てすぐに活躍できるわけではありません。ここでは、ベトナム人材がどうすれば日本の生活、職場に適応できるのかについて考えてみます。

ベトナム人にとって最初のハードルは、日本語と日本の生活様式への対応です。ベトナムは、非漢字圏ということもあり、多くのベトナム人が、日本語の習得に苦労します。また、就労を目的とするほぼすべてのベトナム人は、日本に来るのが初めての人ばかりで、日本の生活に不安を感じている人も少なくありません。

そんな時に頼りになるのが、すでに相当数いる日本滞在のベトナム人。友人、親戚、同郷と、独自のコミュニティを形成しており、彼らが生活のサポートをしてくれます。ただ、これらのサポートを期待できるのも、都心部だけ。地方においては、やはり受入側の体制整備が必要不可欠。日本人従業員との協働、定期的な面談によるコミュニケーションの強化・生活面の指導、初等日本語教育によるカタコトからの相互理解の確立等が重要な要因になります。

その受入体制の充実度によってベトナム人は恩義を感じ、適応しようと頑張ることでしょう。何事もアフターフォローが必要であり、よりベトナム人と受け入れ側の双方の利益に結び付くような仕組み作りが大切なのです。